こんにちは!
医師で、スッキリ研究室長の「ゆん」です。
この記事は、以下のような人に向けて作成しました。
- 頑固な便秘を何とかしたいと思っている人
- 自己流の便秘解消法が正しいのか知りたい人
- 最短で便秘を改善したい人
- 薬に頼らずに便秘を治療したい人
この記事で次のことがわかります。
- 自分の便秘のタイプ
- タイプ別の最適な便秘解消法
- 薬に頼らない便秘解消法
便秘、とっても辛いですよね。便秘自体がストレスになって仕事に集中できなかったり、1時間もトイレにこもることになってしまったり、お腹が張って、好きな洋服を着るのをためらってしまったり…
そんなあなたの悩みを解決するため、消化器専門医(消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、認定内科医)の現役医師である私が医学的根拠をもとに、一つ一つ丁寧に解説していきます。
記事を最後まで読んでいただければ、便秘解消法の方向性で悩むことはなくなるでしょう。
普段診察している患者さんには、ここまで濃い内容の話はできていないのが実情です(時間的に厳しい)…。
この記事を見てもらう方が早い、と思っている今日この頃です。
担当の患者さんにも胸を張ってお勧めできる。そんな内容となっています!
便秘なんかに惑わされず、人生もっともっと楽しんでくださいね!
ダメ、絶対!便秘の放置
なぜ便秘を放置してはいけないのでしょうか。
もちろん、便秘で苦しい思いをしたり、人に迷惑をかけてしまったりすることは望ましいことではありません。しかし、もっと重大な問題があるのです。
便秘にどのような問題があるのか、まずは簡単に解説していきます。
早く自分の便秘のタイプが知りたい!という方は読み飛ばしていただいて構いません。
気になる人はチェックしてください。
便秘と死亡率の関係
便秘の人は便秘でない人と比べて1.2倍早死する。
2010年アメリカで公開された研究結果です。便秘を放置すると寿命が短くなる、という衝撃的な内容です。
参考文献:JY Chang, et al. Impact of functional gastrointestinal disorders on survival in the community. Am J Gastroenterol. 105:822-832,2010.
便秘と心筋梗塞・狭心症の関係
便秘の人は便秘でない人と比べて3%心筋梗塞になりやすく、5%狭心症になりやすい。
2016年にヨーロッパで公開された研究結果です。
便秘の人は致死的な心臓の病気にかかりやすくなります。
具体的には心筋梗塞(心臓の血管が詰まる病気)や狭心症(心臓の血管が狭くなる病気)などでその傾向が明らかとなっています。
参考文献:欧州消化病学会公式学会誌「UEG Journal」2016年4月号p142-151
便秘と脳血管疾患(脳梗塞、脳出血など)の関係
便秘の人は便秘でない人に比べて脳血管疾患に1.9倍なりやすい。
2016年に日本で行われた研究結果で明らかとなりました。排便が4日に1回以下の人は脳血管疾患になる確率が1.9倍になります。
参考文献:Honkura K, et al. Defecation frequency and cardiovascular disease mortality in Japan: The Ohsaki cohort study. Atherosclerosis. 2016;246:251-256
便秘と労働生産性の関係
便秘の人は便秘でない人よりも欠勤が多く、仕事の質も劣り、経済的損失は年間約122万円に相当する。
2020年に日本で行われた研究結果です。便秘の人は仕事のパフォーマンスが悪い、という、考えさせられる内容です。
参考文献:J Gastroenterol Hepatol. 2021 Jun;36(6):1529-1537. Epub 2020 Oct 29.Toshihiko Tomita,I et al. Impact of chronic constipation on health-related quality of life and work productivity in Japan
まとめると…
便秘の人は1.2倍早死し、約4%重い心臓の病気になりやすく、1.9倍脳の血管の病気になりやすい。
おまけに仕事のパフォーマンスも悪い。
…便秘の放置がダメな理由、理解していただけたでしょうか。
便秘のタイプを知る
お待たせしました。いよいよここから具体的な話をしていきます。
3ステップであなたの便秘のタイプを把握しましょう。
今まで自己流で便秘と向き合ってきて、なんだかうまくいかないと感じている人は、自分のタイプに合った治療ができていない可能性が高いです。
正しく自分の便秘のタイプを知ることで迷うことなく治療に専念できるようになりますので、最後までお付き合いくださいね!
便秘のタイプを知るためのステップ
- STEP1 医学的に「便秘」なのか判断
- STEP2 「すぐに医療機関を受診すべき便秘」or「普通の便秘」を判断
- STEP3 3種類のタイプ診断
下の図のような流れで解説していきます。
STEP1 医学的に「便秘」なのか判断
あなたは本当に便秘ですか?
あなたが本当に便秘なのか、まずはしっかり判断しましょう。
3日も便が出ない日があるから私は便秘だと思う!
確かに便が出ない日が続くことを便秘と考える人が多いと思います。きちんとした情報を元に判断しましょう。
少し回りくどいかもしれませんが、大前提をおさえることは大切です。
このステップであなたが医学的に本当に便秘なのか判断できます。
では話を進めて行きましょう。
時間のない方は、後述の「STEP1のまとめ」を見て判断してもらって構いません。
いったい便秘とはどういった状態を指すのでしょうか。
私も所属する日本消化器病学会が作成する「慢性便秘症ガイドライン2017」では「本来体外へ排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」のことを医学的に「便秘」という、と定義づけています。
うーん、わかるようなわからないような…。
順を追って解説していきます。ポイントは「本来体外へ排出すべき糞便」という文言です。
例えば、ハードなダイエットをしている人がいるとしましょう。
1日に食べるのはこんにゃくゼリー数個と、オリーブオイルをかけた少量のチキンサラダ、小さなライ麦パン1つ。
涙ぐましい努力をうかがえる食事内容ですね。
特にダイエットをしていない人からみれば絶対お腹減るでしょ!という食事です。
明らかに食べる量が少ないですものね。
食べる量が少ないのだから、きっと便の量も少ないに違いありません。
便の回数も3日に1回くらいかもしれませんね。
ただ、これは便秘には当てはまらないよ、というのが「本来体外へ排出すべき糞便」の文言のミソです。
食べている量が少ないんだから便の回数も減って当然。
食べたと量と便の量は釣り合っているからそれは便秘じゃない(実際にガイドラインに同様の内容が記載されています)!
つまり、1週間に何回排便がある、とか、排便に何分かかる、とか、そんな細かいハナシは関係なく、本人が食べている分だけ快適に排便できている状態なのであれば、それは便秘ではないのです。
先ほどの小難しい定義をわかりやすく言い換えると…
便秘とは「食べている量に見合う便の量を、しっかり、スッキリ出せていない」状態のことを言います。
だいぶわかりやすくなりましたね。
あなた自身に置き換えて考えてみましょう。
ストイックなダイエットをしている人は、3日に1回しか排便がなくても便秘ではないですし、毎日便が出ている人でも、スッキリ便が出せていないのであれば、それは医学的には便秘なのです。
いかがですか?
ここで、「ああ、やっぱり私は便秘なんだ…!」と思ったあなたは、次のステップに進みましょう。
「食べている量に見合う便の量を、しっかり、スッキリ出せていない」
YES→医学的に便秘
NO→医学的には便秘でない
YESの人はSTEP2に進みます。
STEP2「すぐに医療機関を受診すべき便秘」or「普通の便秘」を判断
このステップではあなたが「すぐに医療機関を受診すべき便秘」なのか、もしくは「普通の便秘」なのかを判断します。
すぐに医療機関を受診すべき便秘?なんか怖いね。
その通り。便秘の影に命に関わる病気が潜んでいることがあるから、このステップはとても重要!
このステップは私たち医師にとっても凄く大切ですし、怖い部分でもあります。
見逃せばその患者さんの命に関わることもあるのですから「怖い」と思ってしまうのも当然ではないでしょうか。
それでは話を進めていきます。
すぐに医療機関を受診した方が良い便秘には「アラームサイン」と呼ばれる項目があります。
本来は医師が患者さんのリスクを判断するときに使用するものなのですが、便秘についてここまで熱心にお付き合いいただいているあなたにも知っておいてほしい内容です。
箇条書きで6つお示しします。
- 1 発熱がある
- 2 急に体重が減ってきた
- 3 排便の習慣が急に変わった
- 4 便に血液が混じる
- 5 50歳以上で便秘になった
- 6 大腸癌の人が血縁関係にいる
いずれかに該当する人はできるだけ早く医療機関を受診してください。
私も日々の診療で6つの項目に該当する人で、たくさんの病気を診断してきました。
少しでも早く病気が見つかれば治療の選択肢も広がります。
脅してしまい申し訳ないのですが、病気でない可能性も十分にあります。
怖がらず、まずはかかりつけ医がいればその医師に、いないのであれば消化器内科のある病院へ相談をしてください。
6つの項目に該当しない方は「普通の便秘」としてSTEP3に進みましょう。
「すぐに医療機関を受診すべき便秘」なのか、もしくは「普通の便秘」なのかを判断する
「すぐに医療機関を受診すべき便秘」にみられる6つのアラームサイン
- 1 発熱がある
- 2 急に体重が減ってきた
- 3 排便の習慣が急に変わった
- 4 便に血液が混じる
- 5 50歳以上で便秘になった
- 6 大腸癌の人が血縁関係にいる
アラームサインが1つでもある
YES→医療機関を受診
NO→STEP3へ
STEP3 普通の便秘 3種類のタイプ診断
STEP3では、STEP1・2に該当しなかった「普通の便秘」の人を3つのタイプに分類していきます。
舐めてた。便秘って意外と奥が深いんだね。
そのとおり。なんとなーくで便秘を語る時代は終わったのです!
以下の図に従ってあなたの便秘のタイプを振り分けします。
注:便秘は本来完全に分類できるものではなく、オーバーラップする場合もあります。あくまで傾向と考えてください。
質問に答えることで自分の便秘のタイプがわかります。
- 質問① 週1回以上腹痛がある
-
YES→タイプ3の便秘型過敏性腸症候群
- 質問② 便が出ない日が続くと便意を感じやすい
-
YES→タイプ1の排便回数減少型
NO→タイプ2の排便困難型
これであなたの便秘のタイプが判明しました!!
以下にあなたの便秘のタイプについて解説をしておきます。
タイプ1 排便回数減少型
- 便が出ない日が続くと便意を感じやすい
- 便の回数減少(週3回未満)
このタイプの人は大腸にたくさんの便が溜まるため、お腹の張りが出てしまいます。
大腸に長い時間便が溜まっているため、便の中の水分が吸収され尽くしてしまい、便が固くなり、便を出しにくい状況にもなります。
主な原因としては、大腸の動きが悪くなることが挙げられます。
タイプ2 排便困難型
- 便が出ない日が続いても便意をあまり感じない
- 排便に時間がかかり、いきむ
このタイプの人は大腸にある便をしっかり、かつ素早く出せません。
強くいきんで出しても、大腸に一部の便が残ってしまい、残便感に悩まされ、1日に何回もトイレに行って排便しなければならない人もいます。
主な原因としては、大腸のセンサーの働きが低下していることが挙げられます。
大腸に便が溜まっても便意を感じられず、そのまま便が残ってしまうのです。
また、歳をとると便意を感じても大腸を十分に収縮できなくなり、完全に便を出すことができず、その一部が残ってしまう場合もあります。
腹筋などの筋力の低下も一因となります。
タイプ3便秘型過敏性腸症候群
- 腹痛がある(週1回以上)
このタイプの人は硬い便であることが多いですが、時々軟便・下痢もあります。
ストレスがかかると悪くなる傾向があります。
20-40歳代の女性で多いです。
原因はまだ解明されていませんが、腸の神経と筋肉の間のコミュニケーションがうまく機能していないことが原因であると考えられています。
質問に答えることで自分の便秘のタイプがわかります。
- 質問① 週1回以上腹痛がある
-
YES→ タイプ3 便秘型過敏性腸症候群
NO→質問②へ - 質問② 便が出ない日が続くと便意を感じやすい
-
YES→ タイプ1 排便回数減少型
NO→ タイプ2 排便困難型
最後に自分のタイプ別セルフケア法を知っておきましょう!
タイプ別便秘解消セルフケア
いよいよタイプ別のセルフケアについてお話ししていきます。
専門用語解説
いくつか専門用語があるので先に解説しておきます(知っている人は読み飛ばしてください)。
- 食物繊維(水溶性・不溶性)
- プロバイオティクス
- プレバイオティクス
- FODOMAP
食物繊維は、その性質から「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」の2種類に大きく分けられます。不溶性食物繊維は便のカサを増やす働きがあります。
水溶性食物繊維は、善玉菌の餌となったり、胆汁酸を運んだり、大腸の動きをよくする働きがあります。また、適度に便にぬめりけを与える役割もあります。
多く含まれる食品
不溶性食物繊維が多い
キャベツなどの葉物野菜、ブロッコリー、タケノコ、エリンギ、大豆など
溶性食物繊維が多い
こんにゃく、わかめ、ひじき、りんご、大麦など不溶性・水溶性
どちらも多い
キウイ、ごぼう、にんじん、じゃがいも、なめこなど
プロバイオティクスは、「共生」を意味するprobiosisを語源にしています。1989年に、英国の微生物学者Roy Fullerらにより「腸内細菌のバランスを改善することによって宿主の健康に好影響を与える生きた微生物」と定義されました。国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)は、「十分量を摂取したときに宿主に有益な効果を与える生きた微生物」と定義しています。
多く含まれる食品
ヨーグルト、納豆、各種サプリメント、各種医薬品など
プレバイオティクス(prebiotics)はオリゴ糖・食物繊維など、食べても胃や小腸で分解・吸収されずに大腸に到達し、大腸に生息する善玉菌の餌になる食品成分のことをいいます。
多く含まれる食品
オリゴ糖添加食品、各種サプリメント、各種医薬品、食物繊維の多い食品など
FODMAP(フォドマップ)は、小腸で吸収されにくく大腸で発酵しやすい糖質の総称で、以下の頭文字を合わせた言葉です。発酵性の(Fermentable)、オリゴ糖(Oligosaccharides)、二糖類(Disaccharides)、単糖類(monosaccharide)、AND、糖アルコール(Polyols)。
多く含まれる食品
小麦(パン、パスタ、うどん、ラーメン)、とうもろこし、シリアル、さつまいも、玉ねぎ、牛乳、ヨーグルト、チーズ、スナック菓子、ガムなど
便秘のタイプ別セルフケア
便秘タイプ別のセルフケア法についてまとめます。
- 水分を1日2L以上摂取(できるだけ冷たい飲み物は避ける)
- 毎日30分のウォーキング
- お腹を捻るような運動(テニス、ゴルフ、ピラティス、ヨガ、ラジオ体操第一など)
- 水溶性食物繊維の摂取を増やす(不溶性食物繊維の摂りすぎは逆効果)
- 適度なデンプン質(白米・ジャガイモなど)を摂取する
- プロバイオティクス
- プレバイオティクス(不溶性食物繊維以外)
- 便意があれば我慢しなくても良い環境をつくる
- 便意がなくても朝トイレにいくことを習慣化する(時間、心に余裕をもった状態で)
- お腹を捻るような運動(テニス、ゴルフ、ピラティス、ヨガ、ラジオ体操第一など)
- 食物繊維の摂取を増やす(水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を2:1ほどでバランスよく摂取)
- プロバイオティクス
- プレバイオティクス
- 高FODMAP(フォドマップ)食品を避ける
- 生活習慣改善(ストレスの緩和、睡眠時間の確保)
- ヨガ(自律神経を整える)
- プロバイオティクス(ヨーグルトは高FODMAPなので避ける)
今回お示しした自分の便秘のタイプに合わせて実践できそうなものから試してください。単体でやるのではなく、組み合わせが重要です。
それでは良いスッキリライフを!
注:本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、特定の病状や症状、治療法に関する具体的な助言を提供するものではありません。具体的な医療的な質問や病状に関しては、必ず専門の医療従事者に相談してください。