こんにちは!医師で、スッキリ研究室長の「ゆん」です。
便秘で悩んでいませんか?
一度はよくなったと思ったら、今日は1時間もトイレにこもらなくてはいけなかった…。
急に便がカチコチになってしまい、お尻が痛い…。
もう5日も便が出ていなくて、仕事に集中できない…。
このような相談をよく受けます。
便秘の日本人は500万人以上いますから、悩んでいるのはあなただけではありません。
そして残念なことに、悩んでいる多くの人が便秘のことを深く知らないまま、行き当たりばったりの対策しかしていません。
便秘解消には薬に頼らない、「正しいアプローチ」があります。
この記事では正しいアプローチを3つ、詳しく解説しています。
みなさんの「毎日のスッキリ」の役立つ内容なので是非最後までご覧ください。
外来の患者さんにも本文のようなお話しができれば良いのですが、診療時間的に厳しいのが実情です…
この記事を読んでもらう方が早い、と思っている今日この頃です。
担当の患者さんにも自信を持ってお勧めできる。
そんな非常に濃い内容となっています!
先にアプローチ3つを提示します。
- アプローチ1 自分の便秘タイプに合わせた治療を選択する
- アプローチ2 腸内フローラを改善する
- アプローチ3 習慣を改善する
それでは解説していきます。
「便秘の放置」はデメリットが多すぎる
まず、便秘は放置しない方が良いよ!ということを手短にお伝えします。
便秘って実は結構怖い病気なのです。複数の論文から抽出した内容をまとめると…
便秘の人は1.2倍早死し、約4%重い心臓の病気になりやすく、1.9倍脳の血管の病気になりやすい。
おまけに仕事のパフォーマンスも悪い。
詳しく知りたい方はこちら
便秘の放置は「百害あって一利なし」です。
本題に入ります。
便秘で寿命が短くなるなんて、怖いね。
そうですね。ただ、解決策はたくさんあります!
【便秘解消アプローチ1】 自分の便秘タイプに合わせた治療を選択する
便秘が良くなったり悪くなったりを繰り返しているあなたに質問です。
便秘には3つのタイプがあることを知っていますか…?
しかもそれぞれのタイプによって治療法が異なることを。
初めて聞いたよ!という方は、まずは「自分の便秘のタイプ」を把握することからはじめてはいかがでしょうか。
(他の記事ですでに把握しているはスキップしてね)
自分の便秘のタイプを知る
便秘には3つのタイプがある。というお話をしました。ただし、これは「通常の便秘」においての話です。最初に除外しておきたいのが、次の項でお話しする「すぐに医療機関を受診すべき危険な便秘」です。少々手間ですが大事な工程ですので最初にチェックしてしまいましょう。
危険な便秘
最初にあなたが「通常の便秘」なのか、もしくは「危険な便秘」なのかを判断します。「危険な便秘」には「アラームサイン」と呼ばれる項目があります。箇条書きで6つお示しします。
- 1 発熱がある
- 2 急に体重が減ってきた
- 3 排便の習慣が急に変わった
- 4 便に血液が混じる
- 5 50歳以上で便秘になった
- 6 大腸癌の人が血縁関係にいる
いずれかに該当する人は医療機関(かかりつけor消化器内科標榜の病院)に相談してください。
6つの項目に該当しない方は「通常の便秘」としてよいです。
アラームサイン。覚えておくね。
1度確認してみてくださいね!
3タイプの便秘症
冒頭で、通常の便秘には3つのタイプがあるとお話ししました。ここでは簡単にあなたの便秘はどのタイプなのか、判断してみましょう。「簡単にじゃなくてしっかりと自分の便秘のタイプを見極めたい!」という方はこちら↓↓↓↓↓をご覧ください。
冒頭で、通常の便秘には3つのタイプがあるとお話ししました。
ここでは簡単にあなたの便秘はどのタイプなのか、判断してみましょう。
(しっかりと自分の便秘のタイプを見極めたい!という方はこちらをご覧ください)
以下の図に従ってあなたの便秘のタイプを振り分けします。
(注)便秘は本来完全に分類できるものではなく、オーバーラップする場合もあります。あくまで傾向、と考えてください。
質問2つに答えるだけで、あなたの便秘のタイプがわかります。
- 質問① 週1回以上腹痛がある
-
YES→タイプ3の便秘型過敏性腸症候群
- 質問② 便が出ない日が続くと便意を感じやすい
-
YES→タイプ1の排便回数減少型
NO→タイプ2の排便困難型
それぞれの便秘のタイプについても簡単に解説しておきます(時間のない方は自分のタイプだけ目を通して下さい)。
便秘にタイプがあるのね。知らなかった!
それぞれ治療が異なるので、知っておいて損はないです。
「タイプ1排便回数減少型」の便秘
- 便が出ない日が続くと便意を感じやすい
- 便の回数減少(週3回未満)
「タイプ1排便回数減少型」の便秘とは
このタイプの人は大腸にたくさんの便が溜まるため、お腹の張りが出てしまいます。大腸に長い時間便が溜まっているため、便の中の水分が吸収され尽くしてしまい、便が固くなり、便を出しにくい状況にもなります。主な原因としては、大腸の動きが悪くなることが挙げられます。
「タイプ1排便回数減少型」の便秘の治療法
- 水分を1日2L以上摂取(できるだけ冷たい飲み物は避ける)
- 毎日30分のウォーキング
- お腹を捻るような運動(テニス、ゴルフ、ピラティス、ヨガ、ラジオ体操第一など)
- 水溶性食物繊維の摂取を増やす(不溶性食物繊維の摂りすぎは逆効果)
- 適度なデンプン質(白米・ジャガイモなど)を摂取する
- プロバイオティクスを摂取
- プレバイオティクス(不溶性食物繊維以外)を摂取
*水溶性食物繊維、不溶性食物繊維、プロバイオティクス、プレバイオティクスについては後述
「タイプ2排便困難型」の便秘
- 便が出ない日が続いても便意をあまり感じない
- 排便に時間がかかり、いきむ
「タイプ2排便困難型」の便秘とは
このタイプの人は大腸にある便をしっかり、かつ素早く出せません。主な原因としては、大腸のセンサーの働きが低下していることが挙げられます。大腸に便が溜まっても便意を感じられず、そのまま便が残ってしまうのです。
「タイプ2排便困難型」の便秘の治療法
- 便意があれば我慢しなくても良い環境をつくる
- 便意がなくても朝トイレにいくことを習慣化する(時間、心に余裕をもった状態で)
- お腹を捻るような運動(テニス、ゴルフ、ピラティス、ヨガ、ラジオ体操第一など)
- 食物繊維の摂取を増やす(水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を2:1ほどでバランスよく摂取)
- プロバイオティクスを摂取
- プレバイオティクスを摂取
*水溶性食物繊維、不溶性食物繊維、プロバイオティクス、プレバイオティクスについては後述
「タイプ3便秘型過敏性腸症候群」←特殊タイプ
- ・週1回以上、腹痛がある
「タイプ3便秘型過敏生腸症候群」とは
このタイプの人は硬い便であることが多いですが、時々軟便・下痢もあります(頻度は人によって様々)。20-40歳代の女性で多く、ストレスがかかると症状が悪化します。まだ完全には解明されていませんが、腸の神経と筋肉の間のコミュニケーションがうまく機能していないことが原因であると考えられています。
「タイプ3便秘型過敏生腸症候群」の治療法
- 高FODMAP(フォドマップ)食品を避ける
- 生活習慣改善(ストレスの緩和、睡眠時間の確保)
- ヨガ(自律神経を整える)
*FODMAPについてはこちらで詳しく説明しています。
驚くかもしれませんが…
ヨーグルト、ハチミツ、納豆など… 一般的に便秘に良いとされている食事。タイプ3便秘型過敏性腸症候群の人にとって、むしろ便秘を悪化させる原因となっているかもしれません。なぜならこれらの食品は高FODMAP食だからです。「タイプ3便秘型過敏生腸症候群」の人は高FODMAPの食品を避けるようにしてください。
注)「タイプ3便秘型過敏性腸症候群」はタイプ1、2と比べて治療法が異なりますので注意しましょう。
次に、治療アプローチ2を解説していきます。前提として、特殊タイプである、タイプ3便秘型過敏性腸症候群の人にはこのアプローチは不向きです。タイプ3の人はこちらを参考にしていください。
便秘のタイプによって考えることも変わるのね。
自分のタイプを知って、最短で便秘を克服しましょう!
【便秘解消アプローチ2】腸内フローラを改善する
私たちの健康を左右する重要な役割を果たしている腸内フローラ。ひしめき合う細菌たちは、私たちが口にしたものを腸内でせっせと分解し、エネルギーや栄養素をつくっています。腸内の環境次第で良いこともすれば悪いこともする。そんな繊細且つ大事なパートナー。彼らが「いい感じ」に保たれれば便秘は良くなる。そう断言できます。
腸内フローラを改善するためには
- プレバイオティクスを摂取する
- プロバイオティクスを摂取する
- 腸内フローラを乱す行為を避ける
の3つを実行しましょう。それぞれ解説します。
アプローチ1とはだいぶ違った内容っぽい!
便秘の治療も切り口を変えて、いろいろあるんですよ!
プレバイオティクスを摂取する
腸内フローラを「いい感じ」に保つためには、彼らにエサを与えなくてはなりません。そのエサがプレバイオティクスです。
プレバイオティクスとは
プレバイオティクス=食物繊維+難消化性オリゴ糖という図式が成り立ちます。まずは「食物繊維」から説明します。食物繊維の定義は「人間の消化酵素では消化しきれない食品中の難消化成分」です。
次に「難消化性オリゴ糖」について解説します。難消化性オリゴ糖も食物繊維と同じく、文字通り、人間の消化酵素では消化することが難しい糖類です。糖でありながら小腸で吸収することができず、そのまま大腸に届きます。
おすすめの食品
食物繊維は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類に分類されますが、食物繊維の中でも水溶性食物繊維を多く含んだ食品を食べるようにしましょう。日常生活に取り入れやすい食品を6つご紹介します。
・ジャガイモ にんじん 納豆 海藻(わかめ、ひじき) キウイ りんご
難消化性オリゴ糖は、大豆などの豆類・たまねぎ・ごぼう・アスパラガス・ブロッコリー・アボカド・バナナ・ハチミツなどに多く含まれていますが、必要な量を摂取するにはオリゴ糖関連の商品を利用する方が効率的です。
プロバイオティクスを摂取する
腸内フローラを「いい感じ」に保つために、生きた「善玉菌」(プロバイオティクス)を摂取しましょう。応援団を補充するイメージです。
プロバイオティクスとは
「プロバイオティクス(Probiotics)」とは「適正な量を摂取したときに有用な効果をもたらす生きた微生物」のことをいいます。その代表例が乳酸菌などの善玉菌です。生きた善玉菌を直接腸内フローラに補充することで、腸内フローラのバランスを整えます。
おすすめの食品
ヨーグルト、ぬか漬け、納豆、キムチ、味噌、チーズなどの食品がおすすめです。効率的に摂取したいのであれば、プロバイオティクスを豊富に含んだ商品を利用してみてはいかがでしょうか。
食べるもので、便秘も変わるのね。
その通り!食べ物が便秘解消の基本です。
腸内フローラを乱す「食べもの・行為」を避ける
一部の食べものは腸内フローラを乱し、その結果、便秘を引き起こしてしまいます。
腸内フローラを乱す「食べもの」
- 高脂肪食
- 食塩
- 砂糖
- 乳化剤
最近話題のダイエット法も便秘にはマイナスです。
腸内フローラを乱す「行為」
- 炭水化物ダイエット
それぞれ解説します。
高脂肪食
脂肪たっぷりの肉料理、揚げ物、ファストフード、スナック菓子、洋菓子などの高脂肪食は消化に時間がかかり、便秘の原因となります。また、高脂肪食は腸内フローラのバランスを乱すことがわかっています。腸内フローラが乱れると「腸の動きが悪く」なり、便秘になりやすくなってしまうのです。その代わりに、オリーブオイルやアボカド、魚などに含まれる良質な脂質を摂取しましょう。これらは消化が良く、腸内フローラを整える効果もあります。
食塩
次に食塩です。食塩の摂取量が多いと、体内の水分バランスが乱れ、便が硬くなる原因となります。また、塩分が多い食生活は腸内フローラのバランスを崩すことがわかっています*。日本人の食生活では、塩分の過剰摂取が問題視されています。加工食品や外食に頼ることが多い場合は、自炊を心がけることで塩分摂取をコントロールしましょう。
*Chen L, et al: Modest Sodium Reduction Increases Circulating Short-Chain Fatty Acids in Untreated Hypertensives: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial, Hypertension, 76: 73-79, 2020
砂糖
砂糖もまた腸内フローラに悪影響を及ぼします。特に精製された白砂糖は、腸内の善玉菌を減らし、便秘を引き起こす悪玉菌を増やします。代わりに、自然の甘みを提供するフルーツや、低GI値の甘味料(例:アガベシロップやココナッツシュガー)を使うことで、腸内フローラを保護し、便秘の改善を図ることができます。
乳化剤
乳化剤は食品の風味や食感を良くするために使われますが、腸内フローラに悪影響を及ぼします。乳化剤は腸の粘膜を痛めることがあり、これにより腸内フローラのバランスが乱れ、便秘や他の消化器系の問題を引き起こす可能性があります。乳化剤は一部の加工食品(生クリーム、マーガリン他)やファストフードに多く含まれていますので、これらの摂取を控えめにするとともに、自然な食品を選ぶことが大切です。
炭水化物ダイエット
炭水化物ダイエットについて説明します。炭水化物を抑えるダイエットは一時的に体重を減らすことはできますが、腸内フローラのバランスを崩すことが知られています。炭水化物、特に食物繊維は、腸内の善玉菌が喜ぶ栄養源であり、これらが不足すると善玉菌の数が減少し、便秘の原因となります。そのため、バランスの良い食事を心がけ、適度な炭水化物の摂取を怠らないようにしましょう。実際、炭水化物制限の実践者の多くが便秘を経験しているようです。
以上が腸内フローラを乱す行為と、それぞれの改善策です。これらを参考に、自分の食生活を見直してみてください。腸内フローラの健康は、便秘だけでなく全体的な体の健康にも密接に関わっています。腸内フローラのバランスを整えることで、便秘解消はもちろん、免疫力アップや美肌効果など、様々なメリットを享受することができます。
私もストレス溜まると、甘いものドカ食いしてしまってる…。
ストレスも便秘によくないですが、スポーツなど他のストレス発散をおすすめします。
【便秘解消アプローチ3 】習慣を改善する
便秘の患者さんの話をきいていると、いくつかの共通点がありました。患者さん本人にとっては日々の生活の中に溶け込んでしまっていて、気づきにくいこと。それが「便秘になりがちな習慣」です。便秘を真の意味で解消するには、この「便秘になりがちな習慣」の改善が不可欠です。アプローチ3ではそんな習慣を見直します。
改善リスト↓↓↓
・水分摂取について
・睡眠について
・トイレについて
さっそく解説します。
水分摂取について
便秘解消のための第一歩は、計画された水分摂取から始まります。からだの水分が不足すると便が硬くなり排出しにくくなるため便秘を引き起こします。
朝に1杯の水(できれば常温で)
ここで大切なのが、毎朝起きたときに水を1杯(200ml程度)飲む習慣です。睡眠中には体は自然に脱水状態になりがちです。私たちが寝ている間も、呼吸や皮膚からの蒸発などで水分は失われ続けているからです。その結果、朝目覚めたときには体が脱水状態になりやすいのです。そこで、朝に1杯の水を飲むことで、これを補うことができます。また、空腹時に水を飲むと胃腸が刺激され、腸の動きが活発になります。この刺激も便秘解消にとってプラスに働きます。
1日に2リットルの水
1日に全体で約2リットルの水分を摂取することを目指しましょう。ちょっと多いな、と感じてしまう量かもしれませんね。でも安心してください。1日に2リットルの水を飲み切る「実践的な解決方法」を提案します。
1日に便といっしょに排出される水分の量はコップ一杯、200ml程度と言われています。飲む水分の量が少ないと、腸はカラダに必要な水分を確保するために、便からもどんどん水分を吸い上げます。腸に水分を吸い上げられてしまった便は、最終的に干からびてカチコチに…。こうなると排便が難しくなってしまいます。カチコチの便とならない、ちょうど良い硬さを保つために必要な水分摂取量が1日2リットルなワケです。
そんなこと言われても、なかなか1日に2リットルもの水分をとることは難しくないですか…?
と思う方も少なくないと思います。そこで、1日に2リットルの水分をとる「コツ」を伝授します。それは「一度に大量にではなく、こまめに水分をとること」。なんだ、そんな当たり前のことをよくコツとか言えたな、と思わないでください。実は続きがあります。それは、「一度に大量にではなく、こまめに水分をとること+ 500mlくらいの水筒を常に持ち歩くこと」です。コツのポイントは2箇所あります。それは「500ml」の水筒であることと、「常に持ち歩く」ことです。500mlの水筒は、私の体験を踏まえて、になりますが、常に持ち運べるサイズとしては最大のサイズと思うからです。これ以上大きいとなかなか「常に」は難しくなってしまう印象です。また、「常に持ち歩く」のは外出先だけでなく、家の中でもそうしてください。こまめな水分摂取を達成するためには、常に少量ずつの水分を取れる環境が必要なのです。
それでも難しいよ、という方は、食事中や運動後などに意識的に多めの水分をとるようにしてください。食事中や運動後など、体が水分を多めに必要とするタイミングが狙い目です。また、食事中に水を飲むと、食べ物と一緒に水分が腸に運ばれ、便の水分量が増えて軟らかくなる効果も期待できます。
水分ってなんでも良いの?という質問もよく受けますが、スポーツドリンクやジュース類は避けてください。入っている砂糖の量が多すぎて悪玉菌増殖のきっかけをつくってしまします。お茶やOS-1(経口補水液)などが良いでしょう。
便秘を良くするのに水分は大切なのね!
水分が不足しただけで便秘になる人も大勢いますよ。
睡眠について
睡眠、足りていますか。
「便秘」と「睡眠」。一見あまり関係ないように思えますが、実際は深く関係しています。便は腸が波を打つように動く、「ぜん動運動」により体の外へ排出されます。この「ぜん動運動」は、交感神経と副交感神経の2つの自律神経によって制御されています。スイッチのONとOFFと考えるとわかりやすいかもしれません。ぜん動運動のスイッチONは副交感神経、スイッチOFFは交感神経です。副交感神経が活発(スイッチON)になると、腸の動きも促進されます。リラックスしている時や深い睡眠中は、この副交感神経がしっかりと働き(スイッチON)、翌日の排便がスムーズになることが多いのです。しかし、睡眠が不足したり、質の良くない睡眠が多くなったりすると、交感神経が強く作用して(スイッチOFF)、腸の活動が鈍くなります。
腸の動きが鈍くなった結果、便秘を引き起こしてしまう。このように、「便秘」と「睡眠」には切っても切れない関係があります。
夕食の時間
便秘解消には、睡眠の質を上げるために、夕食の時間も考える必要があります。寝る前に食事を取ると、体が消化活動により活性化し、深い眠りにつきにくくなります。そのため、就寝3時間前までに夕食を済ませると良いです。
就寝時間
また、寝る時間も重要です。一定の就寝時間を設け(例えば、22:00〜6:00など)、それを守ることで、体のリズム、いわゆる体内時計が正常に機能しやすくなります。特に、22:00〜2:00の時間帯は大腸にとってゴールデンタイムです。このゴールデンタイムに、副交感神経が強力に働き(スイッチ強ON)、腸の動きを活発にするホルモン(モチリン)がバーっと大量に分泌され、便の流れをスムーズにします。逆に徹夜や寝不足で副交感神経が機能する時間(スイッチONの時間)が短くなると、便をこねる時間も短くなって、結果的に便秘が悪化する事態になりかねません。大切なのは、ゴールデンタイムを挟んで睡眠時間を確保すること。理想は22:00〜6:00の8時間睡眠ですが、少なくとも0:00〜7:00の7時間の睡眠は確保しましょう。
起床時間
起床時間も同様に重要です。一定の起床時間を設けることで、体のリズムを整えましょう。腸は規則正しいリズムを好む臓器であり、起床時間を一定に保つことで腸の動きを整えることができます。起床時に1杯の水を飲む習慣と組み合わせることで、更にその効果は高まりますので試してみてください。このように便秘と睡眠には深い関係があります。みなさん日々忙しく過ごしていると思いますが、ゴールデンタイムの睡眠を意識した生活を心がけましょう。
毎日寝る時間と、起きる時間を決めたらよさそう。
睡眠は全ての健康の基礎です!
トイレについて
最後に、トイレについてのアプローチを紹介します。トイレに行くタイミングや、トイレの姿勢も便秘解消には重要な要素です。
朝自宅のトイレに行く
まず、朝自宅でトイレに行く習慣をつけることがおすすめです。人間の体は、起床後30分程度で「排便反射」という体の働きが活発化します。これは、食物が大腸から排出される働きのことで、このタイミングでトイレに行くことで、スムーズに排便ができる可能性が高まります。また、トイレに行くことを我慢すると、大腸が便を長時間保持することで水分を吸収し、硬くなってしまうため、便秘の原因となります。また、便が肛門の近くにあるのに排便を我慢すると、その状態に腸が慣れて鈍感になっていきます。この「慣れ」も便秘を助長する要素になります。便意が生じたらそのタイミングで排便をするようにしましょう。
トイレの姿勢
トイレの姿勢も便秘解消には大切な要素です。腰を前に倒し、肘を膝につける「前屈みの姿勢」が理想的です。それはまさに「考える人のポーズ」。これは、この姿勢が直腸と肛門の角度を自然な状態に戻し、便通が良くなるためです。また、この姿勢は、下腹部に適度な圧力を加え、便を出しやすくしてくれます。この前屈みの姿勢は和式トイレでしゃがんだ時の姿勢に近い角度です。排便には和式トイレの姿勢が適しているのですが、洋式トイレの場合は足台を利用するのもいいでしょう。台の高さは風呂用の椅子の高さが目安です。
温水洗浄便座のシャワー
温水洗浄便座のシャワーの使用も便秘解消に有効です。温水洗浄便座のシャワーから出る温水が直腸に当たることで、腸の動きを刺激します。これにより、便がスムーズに排出されやすくなります。特に、硬い便が出にくいときには有効な手段と言えます。ただし、温水洗浄便座のシャワーを毎回使用している人は注意が必要です。依存してしまうと直腸や肛門の排便センサーが鈍くなり、やがてシャワーで肛門を刺激しないと排便できないという状態になってしまいます。これは非常に厄介な状態です。旅行先などのトイレに温水洗浄機能がついていなかった場合は大変ですよね。最初のうちは温水洗浄機能を併用しても、紹介している他の方法を試してください。最終的には温水洗浄便座のシャワーの力に頼ることなく、自然に排便できる腸を目指しましょう。
トイレに行ったら「考える人」!
研究結果でも効果が証明されています(笑)。
まとめ
繰り返す便秘に対するアプローチについて解説をしてきました。
- アプローチ1 自分の便秘タイプに合わせた治療を選択する
- アプローチ2 腸内フローラを改善する
- アプローチ3 習慣を改善する
いずれのアプローチを選んでいただいても構いませんし、組み合わせも自由です。便秘解消のアプローチには多彩なバリエーションがありますので、自分に合った方法を選んでください。便秘薬は最終手段にとっておき、できるだけ便秘薬に頼らない健康な腸を目指しましょう。
それでは良いスッキリライフを!!
注:本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、特定の病状や症状、治療法に関する具体的な助言を提供するものではありません。具体的な医療的な質問や病状に関しては、必ず専門の医療従事者に相談してください。